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ネバーランドは理想郷ではない













「早く大人になりたいなぁ、、、」

長男がなんとは無しに言う。

休日。
僕ら家族は、久しぶりの大型アスレチック公園に向かっている最中で、車は軽快に街道を進行していた。
僕が目的地に向かう道順を間違えた事はだれも気が付かず、「空いてるね」などと言いながら機嫌にハンドルを握り、うっかりミスを誰にも気づかれないように鼻歌などを差し込んでいる時だった。

「なんでさ?」

僕が尋ねる。

「ほら、色々自由じゃん」

なるほど。
長男目線だと、どうやら大人はそういう風にみえるようだ。

「今の発言、大人になったら撤回すると思うよ」

僕が言う。
奥さんもケラケラ笑った。

「オレ、大人になりたくないな」

突然、次男がそう言った。
車は甲州街道から、神奈川方面に向かった進路に変えるところで、ちょうど信号待ちだった。

「父ちゃんは、そう言う人、一人知ってる。なんだっけ、、、、ああ、思い出した。ピーターパンだ」

「ピーターパンシンドローム」

奥さんが笑いながら付け足す。

「理由があるんだよ」

次男は真面目な顔をしている。

「なんで?」

僕が尋ねる。
車はようやく本来の目的地である横浜方面にノーズを向けた。
僕のちょっとしたミスは、たぶん誰も気が付いていないはずだ。

「オレが大人になったら、父ちゃんと母ちゃんはいなくなっちゃうじゃん」

「?」

僕と奥さんはきょとんとする。
長男はスマホで仲間内でのラインを楽しんでいて気にもかけていない。

「オレ、父ちゃんと母ちゃんと、あとお兄ちゃんと、いつまでもずっと一緒にいたいんだ。だけど、オレが大人になると、父ちゃんも母ちゃんもいなくなっちゃうでしょ?」

次男の言う「いなくなる」が何を意味しているのかは理解できた。

なるほど。
次男にとって、今を幸福と捉えているなら僕と奥さんは満足だ。
けれど、ずっとこのままは有りえない。
いずれにせよ、いつの日か僕と奥さんを解放してくれない事には報われない(笑)

「母ちゃんが、一つ予言をするとしようかな」

おもむろに奥さんが言う。

「けっこう当たるやつ。いい?君たちが大人になったら、お父さんとお母さんに向かってきっと言うんだよ。「うざい」ってさ」

そう言いって、奥さんはケラケラ笑いはじめた。

まあ、たぶんそうだな。
その予言はなかなかの高確率であたるような気がする。

「お役御免だよ」

その時はそんな風に言われたいな。
そして、こんな風にもね。

「いままでありがとうな」

なんてね。


次男よ。
安心しな。

もう少しだけ、父ちゃんも母ちゃんも一緒にいるからさ。

そんな事より、今日のアスレチックはかなり大きいし、楽しもうよ。
天気もとびきり良いしね。

何しろ、父ちゃんも母ちゃんも、そしてお兄ちゃんも一緒なんだから。



最高に幸せでしょ?













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エースを狙え!









「とうちゃん、オレ、テニスをしてみたいんだ」


次男が唐突に言う。

いつだってそうだ。
予測していない言葉に僕はいつも翻弄させられる。

いいかい、僕は血液型はA型で、しかも典型的なタイプなんだ。
想像していない発言には上手に対応できない。
しかもテニスとは、、、、。

それは休日の事。

その日は奥さんがパート仕事で、僕はと言えば、掃除を終えた後、取りこんだ洗濯物を畳みながら夕食は何にしようと考えていた時だった。
いつだってそうだ。
僕は予定を立てて行動する。
なぜなら、予定がたっていないと不安になるA型だからだ。

「だめだよ、父ちゃん、これから晩御飯のしたくがあるし、お母さんだってもうじき帰ってくる。しかもお腹を空かしてだよ。ご飯の準備ができてなかったから、この世の終わりみたいに肩を落とすよ」

実際にそうだ。
奥さんと次男は、大概の事には我慢ができるが、空腹だけは次元が違う。
お腹がすいたら、急ぎの予定をキャンセルしてでもお腹を満たすことを優先するのだ。

僕はいつだって翻弄させられる。
空腹を満たすことが優先され、予定が容赦なく書き換えられる。
もう一度言うよ。
僕はA型なんだ。
しかも典型的なやつ。

「えー!やりたいやりた」

次男が駄々をこねる。
それもかなりこねくり回し始めた。

どうしたものかと僕は思案する。
洗濯物をきちんと片づけ、てきぱきと夕食の準備を行い、そしてのんびりとお風呂に入って、あとは奥さんの選ぶテレビ番組を見ながら楽しく話をするのだ。
世の中の幸福とはそういうもので、それが平和的な家庭だと考える。

「だめだよ」
「えー、じゃあ、お母さんが帰ってきて、聞いてみる。いいよって言ったらいいでしょ?」

うーんと僕は腕組をする。
もうすぐ隕石が地球にぶつかる。さてどうしたものか?と考えるように。

「まあ、じゃあ、そうしよう。お母さんに聞いてみてよ」

そう言って僕は洗濯物の後始末を続けた。




「行ってきなよ。ご飯やっとくから」

仕事から帰ってきた奥さんは、テレビゲームのスイッチをONしながら気軽にそう言った。
わーいわーいと次男が飛び跳ねる。
許可は下りたが、僕はしっくりしていない。

奥さんも長男も次男もバトミントンをやっている。
だから、バトミントンをがんばって欲しいと思っているし、その為の援助は惜しむつもりはない。

本当の事をいうと、長男にも次男にもテニスをやらせたかった。
けれど、奥さんが好きなバトミントンを家族共通の趣味として選択した。
そして、僕はテニスを家族で楽しむ事を封印したのだ。

とは言っても、僕はいつもこっそりとテニスの練習を一人で行っている。
休日の夕方には、公園で、なかなか寡黙な壁を相手に、ボールをぶつけてはラケットを捌く。
フットワークに衰えが来ないように、いつだって、声さえかかれば試合にでれるように仕上げているつもりだ。

「父ちゃんは、テニスができるんでしょ?」

次男が言う。

「いや、できないよ。父ちゃんはバトミントンの方が好きだし、テニスなんかよりバトミントンをがんばって欲しいと思っているよ」
「えー、でも、休みの日、いっつもテニスラケット背負ってどっかにでかけるじゃん」
「父ちゃんはランニングに行ってるだけだよ。知らないのかい?今、ランニングするとき、テニスラケットを背負って走るのが人気なんだよ。」

僕は適当に次男をあしらう。

そもそも子供とテニスを一緒にすることは諦めていた。
いまさら一緒にやるとしても、本気で教えてあげることはできない。
なぜなら、バトミントンのフォームに支障がでてはいけないからだ。
おそらくはラケットの握り方も微妙に違うはずだ。
次男もまもなくバトミントンの大会がある。
変な影響が出てもいやだなと思った。

「ねえ、テニス止めてバトミントンにしない?」
「え?やだよ。お母さん、いいよって言ってたじゃん」

僕は諦めて、次男とテニスをすることにした。





いきなりテニスコートで、と言う訳にはいかないので、近場にあるテニスクラブのオートマチック練習機を使ってみることにした。
おそらくは、まったく対応できず、テニスをすることをあきらめるに違いない。

「やっぱり、バトミントンの方が楽しいや」
きっとそういうだろうと期待しての事だ。

テニス①


「父ちゃん、面白そう。はやくやりたい」

次男はオートテニス練習機を目にしてはしゃぎ出す。

「そうか、でも、ちょっとだけ基本をやろう」

そう言って僕は、最低限の知識を説明する。
グリップの握り方。ラケットの構えと打ち方。打つ時の足の位置と、ラケットを持たない左手の使い方。
あとは次男持ち前のセンスに任せる。
運が良ければ、一球くらいは前に飛ぶだろう。

「今日は特別だよ。」

そもそもだ、僕にテニスを教わるのは百年早い。
枯れ果てているが、曲がり形にも学生時代は東京代表だったんだ。

「始めるよ」

僕はオートテニスのスイッチを入れ、ボールの速度と飛距離を調整する。

ぽーんという音がして、そしてテニスボールが放たれる。

最初次男はまったく反応をせず、ボー然と立っていた。
どうしてよいか解らない。
きっとそう思ってのことだろうと考えた。

四球目からボールに反応しはじめる。

「あれ?」

僕はちょっと驚く。
どたばたとはしているが、スピードとボールの距離を認識したのか、有る程度反応できるようになっていた。

「上手いじゃん」

僕は言う。
次男は満足げにリターンを繰り返す。

テニス②


ラケットが子どもには重いせいもあってか、次男はボールの衝撃でラケットがぶれないように、グリップ位置を調整する。
そんな事は教えてない。
どうやら無意識での反応のようだった。

取りこぼしは多いが、ほどほど悪くは無いリターンを披露する。

驚いたのが、ボールの勢いが弱い場合、弾んだ後の上昇放物線上でボールを叩く。

「すごい、ライジングショットじゃん」

僕は爆笑する。
そして思わず手を叩いた。

極めつけはジャンピングショット。

テニス③

言ってはなんだが、僕だってできない。
エア圭みたいだ(笑)

そして、結構な時間練習機を相手に打ち込みを行い、次男は満足したようだった。
僕はと言えば、良いものを見れたので、練習上のコートで基礎打ちをじっくりと説明して、機械を使わず次男の練習を続けた。

「父ちゃん、おもしろかったね。またこようよ」

帰りしな、次男が言う。

「そうだね。今は、色々挑戦してみる方がよいかもね。だからまたこよう」

僕は、自分が浅はかだったなと反省しながらも、もしかしたらいつか一緒にテニスができるかもと淡い想像をしながら一緒に帰った。


そういう期待も悪くはないか(笑)










The Catcher in the park

県民健康福祉村②
※ 暑くなければ素敵な場所でした





● 県民健康福祉村
● 場所:埼玉県越谷市北後谷82
http://www.saitama-fukushimura.jp/front/bin/home.phtml
● 休園日:特に無し(有料施設除く)
● 開園時間:特に無し(有料施設除く)
● 料金:無料(有料施設除く)
● 駐車場:無料
● 遊び時間:半日~1日



なんとも庶民的な名前の公園だが、程良い広さの規模であり、かつ綺麗に整備されて気持ちが良い公園。

園名に違わず、遊具の類はアスレチックのみだ。
唯一ある乗り物も自転車(レンタル)で、健康作りを意識している。

屋内プールやジム、テニスコートやフットサルコート、約2キロのジョギングコースなど運動に関する設備は充実。

お父さんは運動、子供たちはアスレチック、お腹がすいいたら綺麗な湖畔でランチと洒落こむ事も可能だ。
ロケーションのレベルは高い。

是非、近場に欲しい公園だ。
自宅から遠かったが、、、、、。









夏休みのあるひ。

奥さんは仕事で、長男は部活。

残された僕と次男は、自宅でうだうだしていた。

「アスレチックがいいな」

次男が何の前触れも無く言う。

「よし、行こう」

反対する理由は無い。

唯一の不安要素としては、やけに元気な天候。
既に暑さは最高潮に感じた。

その時既に気温は30度を超えていたからだ。






「お昼御飯買って行こうよ」

僕が言う。

いつもならお弁当を持参するのだが、この日の暑さは手ごわく感じたので、出先で調達することにしてあった。

見知らぬ土地の見知らぬスーパーで、僕と次男はやけに充実した惣菜コーナーを品定めしながら回った。

「父ちゃんは、これにしようかな」

暑さのせいもあり、ガッツリ系のお弁当ではなく、ラフな類のサンドイッチを手にする。

「父ちゃん、オレはこれにするよ」

次男が差し出したのは、食べ物では無くコロコロコミックだった。

「だめだよ、それ買ったらご飯買うお金無くなっちゃうから」

僕が言うと次男はしばらく考えてから

「じゃあ、オレ、おにぎり一個でいいよ。塩おにぎりでいいから。それなら買えるでしょ?」

どうやら次男は、コロコロコミックを買ってもらいつつ、なんとか昼ごはんも確保するという落着点を、交渉の材料として提示してきた。
おにぎりも「塩おにぎり」という最廉価での交渉だった。

僕はしばらく考える。

僕はコミックに対して否定的では無い。
コミックも小説も同類項で考えているし、何も読まないよりはコミックであっても読んだ方が良いと思っている。
色々読んで、その中から自分の価値観に共感できる作品が見つけられたなら見聞も広がるはずだ。

強いて言うならば、子供のうちは、反社会的な作品と、あとはサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」を敬遠してくれればいいと考えている。

「オッケー、そうしよう。でも塩おにぎり一個はだめだよ。へばってしまうから、おにぎりは二個にしよう」

そうして、僕らはスーパーで買ったお昼ご飯を車の中で食べ、再び公園に向かった。







到着してみると、決して小さくは無い公園の駐車場が、やけにがらがらなのが気になった。

もしかしたらと思い、車の中の外気温計を見る。

「38度?」

壊れてるな。
そういう土地ではあるが、さすがにそこまでの気温はないだろうと考えた。
暑すぎて、調子が悪いのだ。
そう考えると、つまりは調子が悪くなるほど暑いのだということになる。

何が正解だ?

最近そんな事ばかり考えているせいか、良く解らなくなっていた。

いずれにしても、水分と休息に気を使い、冒険に勤しむ事にした。





公園は緑豊かで、景観が綺麗だった。

それほど大きくはないが池もあった。

県民健康福祉村③

「アスレチック、あるんでしょ?」

次男は先を急ぐ。
僕は慌てて次男を追いかけた。

アスレチックに向かう途中、不思議な形の建物があった。
どうやら、屋内運動施設のようで、ドーム型の屋根を開いた場所はプールになっていた。
これは便利だ。

夏場の天気の良い日は、屋外プール感覚で楽しめる。

県民健康福祉村④


しばらく進むと、アスレチック広場にたどり着いた。
ゆったりとしたスペースは、綺麗に整備された芝生で覆われていた。

県民健康福祉村⑤

あまり見たことが無いものからチャレンジした。
勢い駆け込んで頂点を目指す。

県民健康福祉村⑥

この日、僕も普段のトレーニング用ユニフォームを着こんでいたので、一緒にチャレンジ。
のっけから、結構な運動になった。
案外、侮れないものだ。

そして、このあとは、思い思いに障害にチャレンジしていく。

県民健康福祉村⑦

点在するアスレチックはそれほど豊富ではないが、そこそこの運動にはなる。
是非、近所に欲しい施設だ。

県民健康福祉村⑧

次男が「うんてい」にチャレンジしようとした時だ。

「あっつい!!」

そう言って地面に転げ落ちた。

「父ちゃん、暑くて触れないよ」

次男はうんていを指差す。

僕もうんていに挑戦したが、おっしゃる通りで暑くて触れない。

「父ちゃんやばい、帰ろう」

次男が言う。

あまりに暑い事に今更ながら思い知らされた。

なるほど。
賢明だ。
これはちょっと、命に関わる。

僕は次男と一緒に車に向かって引き返す事にした。

途中、園内を走る為のレンタルサイクルを発見したが、係の男性がそそくさと自転車をしまっていた。
どうやら、熱中症対策としてレンタル中止の緊急事態のようだ。

県民健康福祉村⑨

こうなると、暑さが身にしみるように感じてきた。

「よし、退散」

僕と次男は車に駆け込み、本日の冒険を早々に終了させた。











付録



僕はお酒が好きなのだが、かと言って強いわけではない。
缶ビール(発泡酒)を3本もあければ、そこそこ立派な酔っ払いになれる。

大概ご機嫌で、ごろごろしながら夢うつつな頃あいに、決まって読むのが、ベルンハルト・シュリンクの「朗読者」かサリンジャーの「ナインストーリーズ」だ。

、、、、と言う話を以前も書いたかもしれない。

ナインストリーズ

短編集であるナインストーリーズは、とりわけ「バナナフィッシュにうってつけの日」がお気に入りだ。

とは言っても、都合の良いことに、僕は何度読んでも作品の内容が覚えられない。
だから、何度でも読めてしまうという訳だ(笑)


これも以前にも書いたかもしれない。

サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」は傑作だ。

僕は学生時代、一度読もうと思って、けれど取りやめている。
結局、どこにでもいる普通の大人になった頃に再び手にした。

読後、読むには頃合いだったなと思い、そして若い時に読まなくて正解だったなと改めて思った。

主人公は男子高校生で、一人称で進行するが、作品世界は対極する「正解」を描いている。

この二つの「正解」は、作品の性質上主人公側から受けるインパクトの方が強い。
そしてそのインパクトが強いが故、影響を受けたとされる人たちによる、実際に起きた幾つかの事件は、本書がトリガーと言われたり、バックグラウンドだと言われたり、猟奇的事件の因果関係としても、この作品を有名にしていった。

因果関係として取り沙汰される一番有名な事件は、ジョンレノンの射殺事件だろう。
犯人はジョンレノンに対し発砲を行った後、現場の歩道に座り込み、警察が到着するまで本書を読んでいたというエピソードは有名だ。

大概、作品から読み取られたメッセージは「片側」の世界の「正解」だ。

この危うい対極を、少ない経験値で読破してしまうと、真理を見失うのではないかなと感じている。

いや、まあ、そこまで真剣に真理を欲している訳ではないので、どうでもよいと言えばどうでもよいのだが、何事も真剣に考え、清潔で純白な世界など存在しない事に失望するような年頃では、受け止め方が全然違うだろうなと、考えたり。

世間に対して失望する(三行半をくらった)少年が、俗世を嫌い、けれどなんとか馴染もうとするも、どうにもうまく取り回せず、価値観の合わない世間との折り合いを見つけ出す事をあきらめ、世捨て人として生きることを決意するも、結局は無垢な子供の純粋さが存在するのはこの俗世なんだな、と、元の世界に戻っていくお話。

未読の方。
読むにはそろそろ頃合いです。

ライ麦


ちなみにお勧めは、「野崎 孝」訳版。

出版されてから50年以上経過しているが、古びた感じはしない。
つまりは機械的に翻訳されたわけでは無く、訳者のセンスがとびきり優れていたということか。

可能なら、「村上春樹」訳ではなくこちらをお読み頂くとよろしいかと。

尚、表紙のイラストは「ピカソ」です(笑)





必要な勇気を探しに











休日。

奥さんはパートで、僕は自宅にこもり、掃除やら洗濯やら何やらの家事をこなしていた。

いつもそうなのだが、やり始めると終わりの無い家事はなかなか手ごわく、けれど、案外嫌いではないので、日がな一日勤しんで過ごす。


「迎えにきてくれる?」

夕方、奥さんから連絡が入った。

「行きたいところがあるんだ」

そう言っていた。

「OK、仕事、終わりそうになったら連絡して」

僕はそう言って身支度を始めた。




「お待たせ」

待ち合わせの場所に停めておいた車の窓を開けると、奥さんはそう言い、そして「はー、疲れた」と笑いながら助手席に座った。

「どこに行きたいの?」

僕は尋ねる。

「う~ん、よく解らないんだけど、だいたいなら解るかな。とりあえず北に向かって走ってよ」

てっきり、夕飯の食糧買い出しに行くものと思っていたが、どうやらそうではなさそうだった。
解せないまま、僕は車を走らせた。
行き先はどうでもよかったし、久しぶりに奥さんとのドライブを楽しむ事にした。





「ああ、ここみたい」

奥さんはそう言って車を降りた。
街道から山中に続く脇道に入ると、道は驚くほど狭くなった。
所々でキャーとか言いながら、奥さんは車の中で身を縮める仕草をした。

「なんだか、不思議なところだね」

僕が言う。
それは景観というより、漂う雰囲気からの感想だった。
夏の暑さはそのままだったが、その暑さを感じさせない不思議な空間になっていた。

「・・・不動尊て書いてある」

「そうみたい」

奥さんは何かで聞いたか、見たかで、つまりはご利益がありそうだと興味を持ち、ちょっと行ってみたいなという好奇心から僕を誘ったようだった。

停めた車から少し歩くと、程無く目的の場所にたどり着いた。

そして雰囲気の不思議さは、むしろ神秘的なものに変わっていった。
ひぐらしの鳴きごえと、そして人の気配が一切無い事も、感覚を研ぎ澄ます要因のひつになっているのかもしれない。

ぼくは少々たじろく。
雰囲気に押され入口付近で立ち止まっていたが、奥さんは遠慮なく中へと入っていった。

不思議な場所

名前の知らない花々が敷地の中で咲いていた。
それは無造作に散らばりながら咲いていたが、廃墟のような野放し具合ではないことが解った。
敷地はとても綺麗に整備されていて、ゴミも雑草もなかったからだ。

「せっかくだし」

奥さんはそう言いって、御賽銭箱に小銭を入れて鈴を鳴らした。
少し御祈りをして、そして入口付近に立ち止まったままの僕のいる場所に戻ってきた。

「不思議な場所だね」

奥さんが言う。
僕は、不思議というのとちょっと違った印象を持っていた。
けれど適切な表現が思いつかなかったので黙ったまま頷いた。

「なんか、奥に行けるみたい」

細い路地が裏山に続いているのに気が付いた奥さんは、そう言いながら歩きはじめる。
僕はちょっと考えて、けれど奥さんの後を追いかけて裏山に続く道に入った、。





僕は再び立ち止まる。
目の前には想像していない世界が広がっていた。

「なんだか、すごい」

思わず僕はそう言った。
奥さんは、目の前に広がる景色をゆっくり眺めながら、奥へと歩き続ける。
不思議な景観の中を行く奥さんを、僕はしばらく眺めていた。

僕の中に、表現ができない感情があった。
それは、表現する言葉を持たない感情だった。

僕はしばらくその場に立ち止まっていたが、奥さんを見失ってしまいそうになり、あわてて後を追いかけた。

不思議な場所②





さらに奥に進む。
けれど、不思議な世界は終わらない。

それより、何か神聖な空気感が強まっていく。

「これ、飲んでよいのかな?」

奥さんは山の斜面にあった湧水を指差した。

「どうだろう?解らないな、、でも、手を清める事は良いと思うよ」

「じゃあ、そうしよう」

奥さんはそう言って手に水をかけた。
奥さんは一言も感想を言わなかったが、その水は驚くほど冷たかった。

不思議な場所③



僕が手に水をかけて、その水の冷たさに驚いている中、奥さんは山の斜面を登る階段を上がっていった。

不思議な世界の不思議な入口のように感じた。
僕はスマートフォンをポケットにしまう。
ここから先、写真を撮るのは止めた方が良いかなと直感的に感じたからだった。

階段を登った先には幾つかの祠があった。

「ここ写真撮影禁止だって書いてある」

僕は黙って頷く。

奥さんは幾つかの祠をめぐり、急な斜面に点在する石造を眺め、その中にあるいくつかの十字架を不思議だと言いながら、やがて階段を下りていった。

正直に言うと、僕はその先に続く道をさらに奥に進んでみたいと思っていた。
けれど奥さんは「もう、帰ろうか?」と言って、来た道を戻っていった。



「ちょっと、イメージが違うかな」

車に乗り込むと奥さんはそう言った。
どんなイメージがあったのか解らないが、何もイメージを持っていなかった僕はなかなかに衝撃的な場所だった。

「さ、帰ろうか。子供たちお腹すかしてるよ」

奥さんはそう言って、「今晩何にする?」と言いながら、ニコニコしていた。

「作ってくれるんでしょう?」

笑いながら、「帰ろ帰ろ」と言い音楽をかけた。


「僕たちはきっといつか
遠く離れた太陽にすら手が届いて
夜明け前を手に入れて笑おう

そうやって青く燃える色に染まり
おぼろげな街の向こうへ
手をつないで走っていけるはずだ」



最近奥さんお気に入りの米津玄師、次男が好きなヒーローアカデミアの主題歌を聞きながら、僕らは自宅へと向かった。

次男はミライセンシのヒーローになった。
僕と奥さんは夜明け前を手に入れて、手をつないで走っていけるだろうか?

そんな事はお構え無しに、夕日は綺麗で、明日の天気を約束してくれていた。

僕と奥さんはおぼろげな街に向かって、歌いながら帰っていった。




夜明け前を手に入れて笑おう



● 西武園遊園地
● 場所:埼玉県所沢市山口2964
https://www.seibu-leisure.co.jp/
● 休園日:オフィシャルサイトへGO
● 開園時間:オフィシャルサイトへGO
● 料金:  オフィシャルサイトへGO
● 駐車場:1日=1,300円~1,500円(時期によって変動)
● 遊び時間:1日以上




今回のフィールドは遊園地だが、実は遊園地で遊ぶが目的ではない。

「タカラッシュ」をご存知だろうか?

「リアル宝探し」をコンセプトに、全国津々浦々で開催されているイベントだ。

街おこしや集客目的にフィールドを使ってのリアルロールプレイングゲーム。
株式会社タカラッシュというイベント会社が行っている。
↓↓↓
http://www.takarush.jp/

利用時はそのイベントごとに無料だったり有料だったりする。
かねてから「楽しい」と聞いていたので、どこかで何かの折に挑戦してみようと狙っていた。

今回はそのタカラッシュがプロデュースするイベントの一つ、西武遊園地内で実施されている「ミライセンシ」に参加した模様をレポート。

本イベントは有料だが、本気度は案外高く、夢中で取り組む事となった。












それは、少し遡っての頃。

時は冬で、東京でも降った大雪の名残がそこかしこに見られた。

僕は奥さんに手を焼いていたころで、奥さんも同様に僕に手を焼いていたころだ。
僕らは出口の無い迷路に迷い込んでいた事に気づき、そして後戻りできない事にも、後々気が付く事になる。

そんな最中、僕は思いもよらない情報を耳にする。

それは、自宅から程ない遊園地で、人知れずに起こっていた事件の情報だった。






「大変だよ。事件、事件」

僕が言う。

「何?どうしたの?」

次男が神妙な面持ちで振り返る。
日曜の朝。
朝食に食パンをかじっていた最中だった。

「さっき、知ったんだけど、ちょと先にある遊園地に、謎のロボットが現れたんだって」

「え?何?それ」

「なんでも、人間の心を破壊してしまって、何もできないようにする怖い奴らしいよ」

僕はスマーフォンを次男に差し出す。
そこには、未来から襲来したロボットの画像があった。

「これから一緒に行って、やっつけてこようよ」

僕が言う。
次男の瞳が輝く。

「あ、俺、パスね」

長男が言う。

「友達と遊ぶ約束してるし、夕方、友達が家にくるからさ。父ちゃん、適当にやっつけといてよ」

さっぱり乗り気ではない長男と違い次男は興味深々。

「行こう、行こう」

次男は食パンを押し込みながら身支度を始める。

「OK。なるべく直ぐ行こう。きっと大変な事になってるからさ。でも、その前にお昼ご飯用のお弁当作るから、ちょっとまっててね」

そう言って僕は炊飯器のスイッチをいれる。

「なんだよ」

そう言いながら、次男は二枚目の食パンを食べ始めた。









滅多にないことだけれど、僕らは電車で目的地に向かう事にした。
たまには良いかなとの気まぐれからだった。

ヒーローアカデミア①

いくつかの、父親を感じることができる事の一つとして、電車なりバスなりで子供たちを引率する事がある。
僕は少し気分が浮き立つ。

途中乗り換えを行い、けれど程無く目的地である遊園地にたどり着いた。

その遊園地は、うらぶれた様相で、僕は少し手遅れを感じた。
もしかしたら、僕らはもう世界を救う事はできないかもしれない。

「父ちゃん、ここ入れるの?」

次男が僕を見上げる。

「たぶん」

僕は受け付けに行き入園料金を払おうと尋ねた。

「本日は無料です」

受付の女性はにこやかに答えた。

無料?
たしか入園料は千円以上したはずだ。
なのに、僕ら以外だれも入園しようとしている人がいなかった。

ますます様子が変だと思い、けれど、とにかく僕らは中に入ることにした。
なにはさておき世界を救わなければならない。

それが例え、入園料が無料という、解り易い罠だったとしてもだ。








到着したのは正午を少し過ぎた頃合い。

僕らは、想定される壮絶な戦いを前に、腹ごしらえをすることにした。
それは戦いのセオリー。
手を抜いてはいけない。

僕らは適当な休憩スペースを陣どり手持ちした昼食をとる。
遊園地に入ると、案外家族連れがいた。

どうやら、僕らの入園が遅目であった為、入口に人がまばらだったようだ。

ヒーローアカデミア②


それにしても、と思う。

写真を見ると、周りの人々はがっち防寒服を身にまとっているが、次男はスカスカ生地の半袖だ。
季節感が伝わらない(笑)





昼食後、僕らは数あるアトラクションには目もくれず、世界救出の為の任務に向かった。

僕らの任務はこうだ。
未来から放たれた、人類を滅亡へと導く恐ろしいロボット「マインドキラー」を見つけ出し、戦い、そして倒す事。

その為には、、、

① フィールドに隠された「マインドキラー」の手がかりと、その姿を捉えることができるという「謎のスコープ」を発見する事。
② マインドキラーを発見したら、フィールド内にちりばめらている謎を解き、謎で封印されている武器を手にれる事。
③ 手に入れた武器を駆使して、マインドキラーと対決し、そして勝利する事。

が必要となる。

そう、僕らは「ミライセンシ」となり、マインドキラーと戦うのだ。

僕らは「ミライセンシ」になるべく、まっしぐらに受付と向かった。
ヒーローアカデミア③

受付を済ませると、最初の任務「マインドキラー」の手がかり探しの指令を授かった。
これをクリアできないと、ミライセンシとして認められない。

僕らは指令書を手にフィールドを駆け回った。

ヒーローアカデミア④


指令所には断片的な情報が書かれている。
それは情報というより、少々やっかいな謎のよう。
その謎を解くと、「マインドキラー」の手がかかりにたどり着く。

僕らは知恵を出し合い、時には間違い、けれど少しずつ手がかりを手に入れていく。
ヒーローアカデミア⑤

僕らはフィールを右往左往しながら、やがて全ての手がかりを手に入れた。

ヒーローアカデミア⑥

最後は、「スコープ」の発見。
そして、ついに、かの恐ろしいロボット「マインドキラー」の姿を目撃する。

ヒーローアカデミア⑦

小さなスコープを除くと、遊園地内を横切る「マインドキラー」の姿が確認できた。

そして、僕らは「ミライセンシ」となったのだった。





最初のミッションをクリアし、「ミライセンシ」として認められた僕らは、「マインドキラー」と戦う為の、「どこかに封印されている武器」を探す指令を受けた。

最初は指令本部での作戦会議から始まる。

新たに渡された指令書には、やはり断片的な情報だけが書かれていた。
この謎の大枠を指令本部内にある情報と照らしあわせて、行動スケジュールを立てる。

ヒーローアカデミア⑧


何事もそうだが、やみくもに行動を起こしても路頭に迷うだけだ。
今回のミッションはまさにそれだった。

きちんと取るべき行動と目的地を把握していないと、どうしてよいか解らなくなるからだ。
実際僕らは、気合いと根性でなんとかなると、取るものもとりあえずフィールドへ飛び出したが、結局そそくさと本部に引き返すことになってしまった。

つまりは、どうしてよいのか解らなくなってしまったからだ。

本部に戻ると、僕らは必至に指令書の謎を解いていく。
次男は床に座り込んで、本部に有る手掛かりを基に謎をといて行く。
こんなに真剣な次男は見たことない。

ヒーローアカデミア⑨

指令書の謎を解くと、探すべき武器の有りかの「大枠」が解る。

僕らは改めてフィールに飛び出した。
捜索エリアは極めて広い。

僕らはフィールドを飛び回る事になった。





大枠の目的地にたどり着いたら、本格的な捜査を始める。
封印された武器は、「ここです」みたいな解りやすい状態では存在しない。

ヒーローアカデミア⑪

僕らの前に立ちはだかるのは、やはり「謎」だ。

ポーネグリフを紐解く様に、一つ一つ発見と謎ときを繰り返す。

ヒーローアカデミア⑩

ネタばれになるが、僕らが一番手こずったのはこれだ。

ヒーローアカデミア22

この謎はぜんぜんわからず、、、。
禁じ手となるが、自宅待機の奥さんにメールし謎解きを手伝ってもらった(笑)




どうにか僕らは全ての封印を解き、指令本部に戻る事ができた。
既に、スタートしてから2時間以上を経過している。

このままでは、地球は滅んでしまう。

僕らは全ての武器の封印を解き、そしてそれらの全てを手に入れることができた。

最後の戦い。

僕らは武器を手に、「マインドキラー」との直接対決に向かった。





それは、フィールドの奥まった場所にあった。
恐らく、普通に遊園地を楽しむ場合、近寄りもしないような場所だった。

ヒーローアカデミア⑬

陰鬱とした建物が僕らを誘う。
どうやらここが、決戦の場所ようだった。

少々躊躇したが、僕らは建物の中に入る。
入口に誰が居るでもなく、扉は開け放たれたままだった。

ヒーローアカデミア⑭


通路を進み、階段を上る。

その先には誰もいないかった。

「そこで、待っていてくださいね」

突然声が聞こえた。

階段の奥のカーテンが開かれ、女性が一人出てきた。

「今、1チームがマインドキラーと戦ってますんで、次の順番となります」

その女性は優しい声でそう言った。

どうやら、「マインドキラー」は複数体いるようだ。
先陣組が1体の「マインドキラー」と戦っているとは、、、。

とりあえず、僕らは階段で待機となった。
僕は手を見る。

手には封印を解き放ち手に入れた武器(カード)があった。

「終わりましたんで、次のかたどうぞ~」

なんだか病院の診察みたいな感じで僕らは呼ばれた。
けれど、僕は地球を救うために、最終決戦場に次男と共に向かった。





「武器(カード)は手に入りましたか?」

最終決戦場の受付女性はやはり優しい声だった。

「全部手に入れたよ」

次男が自慢げに差し出す。

「すごいですね。良かったです。では、ここにセットしてください」

僕らは指定された装置に、手に入れた武器(カード)をセットする。

ヒーローアカデミア⑮

それは厳かな儀式のようで、気持ちが奮い立つ。

受付女性は言葉を続けた。

「マインドキラーは手ごわいです。普通に戦っても勝てません。けれど、ミライセンシが手に入れた武器(カード)があれば、恐らく勝つことは可能です」

「恐らく?」

「はい。武器(カード)の能力は必要に応じて発動します。けれど、その能力を最大限に発揮させるのはミライセンシの動きによります」

「動きによる?」

「はい。武器の能力が発動したら、その能力を最大限に発揮する動きをとります。それがシンクロすると攻撃は最大限に有効になります」

「え?負けることあるんですか?」

「はい。あります。無事にお帰りくださいね」

なかなか物騒なアドバイスを受け取り、僕らはマインドキラーとの最終決戦に立ち向かった・






その場所は、真っ暗闇だった。

やがて、目の前に巨大なマインドキラーが登場した。

僕らは封印された武器を使ってマインドキラーの攻撃をかわす。
もちろん全力で。

全身を使って攻撃をかわしたら、今度は全身を使って反撃を行う。
僕は写真を撮ろうと思っていた事を思い出したが、正直それどころではなかった。

「写真とってもいいですかね?」

事前にそう確認をしたが、

「余裕がありましたらどうぞ。命の保証はしませんが」

受付の女性は笑いながら恐ろしい事を言ったのを思い出した。
そして、案の定余裕は一切なかった。

戦場の一枚。
これが精一杯だった。

ヒーローアカデミア⑯


そして、激しい戦いは終焉を迎えた。

僕らは勝った。
世界は救われたのだ。

次男は大喜びで、戦場を後にした。

気が付けば、開始から3時間は過ぎていた。





「おとうさんがいて良かったよ」

帰りしな、次男がそう言った。

「なんで?」

「俺一人じゃ無理だったもん。お父さんと力を合わせることで、最後までできたんだよ」

「そっか、でも、お父さんも同じだよ。お父さんも一人じゃ、最後までできなかったよ」

それは本当の事だった。

一人では無理なことは世の中沢山ある。
けれど、助け合う事で、出来ない事も出来ることになる。

そんな事が学べたなら、高収穫だなと思った。

「とりあえず、世界は救ったんだし、かえろうか?」

「帰ろう、帰ろう。寒くなったし、お腹も空いた」

さあ、次の冒険に向かう前に、僕らの本部に帰ろうか。
あまり遅くなると、マインドキラーより手ごわい指令本部長(奥さん)に怒られるからさ(笑)。
(嘘です・・・笑)

ヒーローアカデミア21


それにしても、楽しかったね。





いらっしゃいませ
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子どもたちとのお出かけ記録。

これからの方々の参考になれば幸いです。

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