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三人のイーダ














こんな風景をわたしは知っていた

生まれる前

そう
あの時 わたしは
ふたりを見ていた

そして確かに
このふたりを選んで
生まれてこようと
決めたのだ




こうの史代「夕凪の街 桜の国」より



夕凪の街桜の国2












「携帯変えない?」



奥さんが言う。

この四月、長男は中学生になる。

「中学になったらスマホを買ってもらうんだ」

長男も言う。
中学になったら買ってもいいよと、確かそういう約束で、それならいっそ、皆で買い直そうよということになった。



「家族割とか、安くなるんじゃないかな?」

奥さんはスマホを新しく買えると浮足立つ。

家族割?

僕は笑った。
気分転換には良いかもしれない。

何か、新しい事をするにはちょうど良い季節だと思った。








僕は新しくなったスマホの操作を覚える為に、一つ一つのアプリを確認していった。
その中の一つに、書籍類を読む為のソフトがあった。

今時はそうだよね、などと思いながらなんとなしにいじる。

所謂、有料書籍をネット購入し、スマホ内で購読する類のもので、とりたてて目新しいものではなかった。
けれど、ログインの初回特典として1,500円程のクーポンが貰える事がわかった。

「せっかくだし、クーポンで何か買っちゃおう」

毒になる事もないし、普段読まない作家の作品でも手に入れればよいやと、販売されている書籍をあさった。

「フィッツジェラルドかゾラでも買うかな、、、」

そんなふううに思いながら画面をいじくった。
いっそ、アダルト書籍でも買って気分転換でもするか?
悪戯心も働いて関連作品を調べたりもしたが、なんだか馬鹿らしくなって、再び一般作品群を無造作に閲覧した。


その中に、ちょっと心に留まる作品があった。
そっれはコミックで、そして知らない作家の作品だった。

今時のコミック画風は際限なく進化を続けている。
それに対して、時間が止まったかのように素朴で優しい画風の作品だった。

夕凪の街②



「こうの史代?知らないなぁ、、、」

そんな事を思いながら、けれど、自分の感性を刺激してくれるヴィジュアルやタイトルには、何も考えず従うのが良いことを僕は知っている。
こういう出会いは大概失敗しない。

値段も安いし、迷わず購入した。

そしてしばらく、読むことを忘れてしまっていた(笑)









僕が本を読むようになったきっかけは、以前にも書いたが松谷みよ子の「二人のイーダ」という作品を読んでからだ。

ふたりのイーダ②




簡単に言ってしまうと、主人公の少年が見知らぬ館に迷い込み、人の言葉を話す「椅子」と出会い、そしてその「椅子」が探し続けている「イーダ」という少女の謎を解き明かしていくという作品だ。
乱暴に言えばファンタジーなのだが、角度を変えると太平洋戦争を扱った反戦的な児童文学でもある。

イーダと呼ばれる少女は、8月6日に広島に行ったきり館にはもどらず、それいらい「椅子」はイーダを探し求めて館のある森の中を彷徨い続けていた。
流れ的に、少女は原爆にあいそのまま行方不明となっている。


直接的に、戦争の悲惨さや恐怖を扱った作品の場合、どうしても直視できなかったりもするが、作品の背景が太平洋戦争時代だった場合は、抗う事も無くその時代の苦悩を理解しようとする不思議さがある。
正直なところ戦争に対しては、「恐ろしく、悲しく、悲惨で、破壊以外の何物も生みださない行為」と認識できれば十分だと思っている。

だから、この「二人のイーダ」のように、恐ろしい戦争を背景に、けれど人の優しさが良く解る作品だと、相反して戦争の不必要さが理解できたりする。







こうの史代「夕凪の街 桜の国」は、原爆が投下されてから十年後の広島を舞台に始まる。

そこから3世代が3つの作品として描かれている。
すべての作品が原爆の日を起点とした一本の糸で、薄れる事の無い放射能の恐ろしさと、薄れていく戦争の悲惨さを紡いでいる。

夕凪の街



けれど、物語の世界は陰鬱ではない。
ごく普通の人たちの、朗らかで優しい日常を描いている。
さらには、ちょっとしたロマンスにもときめかされる。

優しい人たちって、なんて素敵なんだろうと、改めて思う。


華やかな物語は、両手に銃を持った無敵のヒーローと、類まれな美貌のヒロインに任せておけば良いのだ。
僕ら「その他大勢」は、そんな世界には興味が無い。






どうも、僕は世の中に対して疎いようで、この作品は多くの人に評価されているようだ。

十年程前には実写で映画化されているし、今年の夏にTVドラマとしてNHKで放送がなされるそうだ。

夕凪の街桜の国



なるほど。
世の中、優しい人がたくさんいるもんだな。





よかった。





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花咲く春の気配

ペイント①
※緑が芽生え、花咲く春は近い













「下駄箱、色塗ろうよ」



清々しい天気の日。
奥さんは、予備で使っている味気ない下駄箱を色塗りしたいと考えたようだった。

玄関にある造り付けの下駄箱は満杯で、日常的に履く靴達を手際よく出し入れする為に、本来は何の為なのか解らないシンプルな木製の棚を玄関脇に置いて、靴置き場として使っていた。


「ペンキ、100円ショップで買ってきたんだ」

そう言って取りだされた色は緑と白だった。

「白で調整しながら、なんか、こう、いい感じの緑に塗ってね」

奥さんは気軽に難しい事を言った。
話を聞いていた次男が、「やりたい、やりたい」と言う。

僕は次男に言った。
「いいよ。一緒にやろうか。そのかわり、いい感じの、緑に塗るんだよ」






僕たちは、木製の棚から靴達をどかし、玄関先に置いた。
日差しは心地よく、少し暖かくもあった。

棚に付いた泥をたわしでおとし、さっそく色塗りを開始する。
色調合具合が解らないので、適当に色塗りを開始。

ペイント②


「なんか、イメージと違う」

そう言いながら、奥さんも色調合に参加。
けれど、首をかしげながら、まあいいかと、塗り始めた色でやりきることになった。
ペイント③

ほとんどを次男が塗り、細かい隙間は僕が調整をした。
出来あがってみれば、意外と悪くない。
これからの季節には、心地よい色合いだ。

ペイント④


乾くのをまって、木製の靴箱を元の場所に設置した。
好みもあるかもしれないが、収まり具合はなかなかだと思った。

ペイント⑤

もうすぐ、花の季節。

我が家の玄関には、一足先に花が咲いている。

ペイント⑥


華やかな季節は、もうすぐだ。



そんなある日、、、、








「自転車ほしいな。電動の」


休日、奥さんはどこかで貰ってきたカタログを見ながらニコニコしていた。

「買えばいいよ」

僕が言う。

奥さんが最近勤め始めたパート先は、車で行くには近すぎるが、自転車で行くには微妙に遠かった。
普段から歩いたり走ったり、自転車で長々と移動したりが得意ではない奥さんは、電動自転車があたら便利だろうなと考えたに違いない。

「今から行こうか、買いに」

僕が言うと、行こう行こうと身支度を始めた。
子供たちはテレビゲームに夢中で、そして無理に一緒に行く必要はないなと、留守番を頼むことにした。

そして、僕と奥さんは二人で近場の自転車さんに行くことになった。




「たくさん種類があるんだね」
僕が言ううと
「でしょ。どれにしたらいいのか解らないね」
と奥さんは、自転車に貼られている値段とスペック表を覗き込んでまわった。

どれも同じと思っていたが、バッテリーの充電時間や、一度の充電で走れる距離が違ったりと様々だった。

「これ、値段が高いのに、あんまり走らないね」
「でも、充電時間が短時間で済むみたい」

そんな会話で、自転車を眺めて回る。

あまり高いのは贅沢かなと奥さんは思ったようで、一番安いモデルの性能を色々確認していた。
けれど、事前に調べていたモデルがあって、その商品だけは知識があり、僕に一生懸命説明をしてくれた。
安いモデルより四万ほど高かったけれど、解りやすい奥さんの性格から、きっと高い方のモデルが欲しいのだなと容易に想像がついた。

電動自転車②


「どれでもいいよ。気に入ったのを試乗させてもらったら」

そう言って、僕は店員さんに声をかけ、奥さんがお気に入りと思われるモデルと一番安いモデルの試乗をお願いした。
奥さんは店員さんに説明を受けながらそれぞれを試乗する。

電動自転車①

「うーん。どうしよう・・・」

悩んでいる奥さんと変わって僕も試乗させてもらう。
正直、どちらも同じに思えたが、いずれにしても軽々と進む快適さは心地よい。

「こっちにしようよ」

僕は値段の高い方を指差した。
奥さんは頷く。

選んだのが僕であれば、奥さんは気も楽なようだった。


スイスイと進む自転車のように、これから先、大した困難もなく奥さんと子供たちがすごせたらよいなと思う。
充電が必要な時には、コンセントの役割を僕がするよ。

いつだて、そういう役割をしてきたつもりだからさ。




いらっしゃいませ
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Author:kakeru666
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子どもたちとのお出かけ記録。

これからの方々の参考になれば幸いです。

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