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いつだったかのある日のこと。





「僕が結婚した時、奥さんは中学生だった」




これはネタだ。

でも事実でもある。



僕は社会人になってほどなく結婚をした。

「え?なんで?早くない?」

よく言われたことで、つまりはまだ若いし、これからたくさんのことを経験できるのに、自ら自由を捨ててしまうの?
大袈裟に言えば、たぶんこんな印象だったのだろう。





僕は多分、結婚願望が強くあったのだと思う。
その先には、一人ではなく、家族という仲間ととともに、ドタバタと楽しく過ごす、とりたてて特別ではない、でも楽しい日々にあこがれていたのだ。


特に不遇な家庭で育ったわけではない。
どちらかといえば、ごく普通の、ほどほど真面目な家庭環境で育った。
だから、身の置かれた間逆の環境に憧れたわけでもない。


強いて言うなら、とても手のかかった弟に両親はかかりきりで、でもそれは当然と思っていたし、けれど、心のどこかで自分を中心にした生活を手に入れたいと、結構なわがままを胸の中で育てていたのかもしれない。




言ってしまえば、僕は再婚である。
最初に結婚した際、今の奥さんは中学生だったという話。

多少なりとも月日は流れて、僕が離婚した際には社会人になっていた。
週末にはいつも遊びに来てくれて、そのたびに鍵をあけて住処に上げるのが(内緒の話だけれど)億劫になり、鍵をあげるから勝手に上がって好きにしていてねと言うことになって、気がついたらそのまま住み込んでいた感じ。

なので、あまりロマンチックなエピソードは無い(笑)




昔話。

内なる悪魔のように結婚願望が膨らんでいたころ。

そんなだったので就職して程なく、当時お付き合いのあった女性に「結婚しようよ」と億面も無く声をかけた。
まあ、当然、「いやです」と断られたのだが(笑)


さてどうしたものか?

僕の結婚に対する憧れはつのり、結果、振られた彼女の先輩に「結婚してください」とお願いをしていた。

「いいよ」


この脈絡の無い流れで僕は結婚することになった。
仲間内では、僕の結婚を知って、先の振られた女性と結婚するものと思っていたようだった。
けれど実際にはその先輩と結婚したことを受け、ちょっとした事件となった。

「彼女、どうするの?」

周り中から責められた。
両親からも問いただされた。

僕が彼女を捨ててその先輩に靡いたということになり、後ろ指を差されながらしばらく日々を過ごした。
そうなのかもしれない。
けどちょっと違うとも思っている。

まあ、いずれにしても僕は子供だったのだ。
否定はしきれない。





「あの人だれの知り合い?」
「え?、式場のモデルさんじゃない」

奥さんはスラリとしていて、僕より背が高かく、少々目立つ容姿だった。
結婚式場で手持ち無沙汰に窓辺でぼんやりしているのを見て、見知らぬ誰かが会話していた。
冴えない僕とは「あらゆる面」で不釣合いだったが、そこが憧れでもあった。


僕は程ほどに世間ズレしていたが、奥さんも微妙に世間ズレしていた。
良い表現を使えばいまどき珍しいのではと思うほどの「お嬢様」な感じ。

実際にお嬢様で、某銀行役員を経て融資先の社長をお父さんがしていた。
実家は駅前にもかかわらず100坪以上の豪邸だった。

いま思えば、よくもまあ、反対されなかったなと不思議に思う。
僕の両親は微妙に反対していたが。

「家柄が合わない」

古風なことが理由だった。

けれど、そんなズレた二人は案外平和に仲良く日々を過ごした。
奥さんは育った環境からは想定できないほど質素でごく普通の日々を好んだ。

違和感が生まれたのは、結婚して5年程を過ごしてからだ。

僕は子供をもうけて、奥さんと子供と、ドタバタで庶民的な家庭を夢描いていた。
けれど奥さんは、二人だけでいつまでも楽しく過ごせたらよいなと考えていた。


この理想のズレは二人が二人とも認識しはじめて、けれどそれからまた数年を過ごした。




ある日のこと。


ちょっと話をしようか、と奥さんと僕はリビングで向き合った。

「言いたいことはわかるよ」

奥さんが言った。

「離婚しようか?」

僕が言うと、「いいよ」と、結婚しようと声をかけたときと同じ返事がかえってきた。

たしか、奥さんは笑っていたと思う。

「私、一度だって、ダメだよっていった事ないでしょ?」








二人で離婚を決めてから、けれど、半年ほど一緒に暮らしていた。
一緒にご飯を食べたり、テレビを見たり、いつもと同じ生活を続けた。

やがて僕の新しい住処が決まって、引越しが終わり、「どこにしたの?」と奥さんが尋ね、「こんど招待するよ」と言って別れた。
引越しの時、奥さんは気を使ってか一日出かけていた。


少しして、僕は約束通り奥さんを新しい住処に招待した。

「ちゃんとしたところで安心した」

奥さんはそういって、僕の本棚から一冊を取り出して、のんびりその日を過ごした。

「またくるね」

奥さんは夕暮れにそういって帰っていった。
そして二度と来ることはなかった。





その年の大晦日、突然奥さんから携帯に電話がかかってきた。

「離婚届け今日出したよ」

そういえば、奥さんに渡したきりでどうなったのか知らないでいた。
かれこれ半年は経っていたはずだ。


「こんな日だと、きっと、忘れないでしょう?狙ってたんだ」

電話口の奥さんは悪戯っぽく言って笑った。
奥さんは小さい悪戯が大好きだったことを思い出した。

「またね」

奥さんはそういって電話を切った。
これが最後のやりとりとなった。






共通の知人の話だと、前の奥さんは個人で事務所を構え、どこぞの会社の顧問などをしているようだ。
これは、結婚していた当時から宣言していたことで、実際に目標を果たした事になる。

「そのうち働かなくてもいいようになるからね。私が養ってあげる」

よくそんな事を言っては、フフと笑っていた。

ごめんなさい。
僕は思う。

僕は、ちっぽけで頼りがいがないけれど、父ちゃんでいられれば何も望まないんだよ。

隣の部屋で幼い兄弟が大声で喧嘩してるのだって、それを奥さんが怒鳴ってるのだって、全然楽しいんだから。

でも、まあ、大晦日はいつも思い出す、
作戦成功だね。










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No title

こんにちは~♪

毎度、続きが気になる連載小説のように
いつも楽しませていただいております

出だしの所を真似して、ちょっと自分の事を…
「僕が結婚した時、クワ子は25歳だった」
…同じ再婚でも面白くない!(爆)

父ちゃんでいられれば、それでよし
多くは望みません

と言っても、今のご時世、結婚や子供は
誰でも、という訳にはいかない現実

2度も結婚できた縁に感謝します
結婚式は1度もやってないけど(笑)

いらっしゃいませ
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これからの方々の参考になれば幸いです。

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