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家族の肖像





「今日、引っ越し先、母ちゃんと見に行ってきたんだ」

自宅に帰ると、次男が楽しそうにそう言った。

離婚してから、思えば幾月が過ぎている。
この間、奥さんから時折でていた話で、子どもたちを連れて家をでるという、まあ、そう言う事を意味していた。

「へ~、どう?良かった?」

僕はご機嫌にしている次男に合わせて、ワクワクした感じで尋ねた。

「えっと、、、」

次男話す代わりに、壁にかけてあった家族間で使っている連絡ボードを手にとり、テーブルに乗せると、そこに何やら書き始めた。

どうやらそれは、奥さんと見に行った物件の間取り図のようだった。

「ここが玄関だよ。それで、そのすぐそばに部屋があって、お兄ちゃんとオレの部屋なんだって」

次男はとても嬉しそうに話した。

僕はスーツから寝間着に着替えながら、ニコニコとする。

君たちの部屋はこの家にあるんだよ、と心の中で突っ込みを入れたり。

初めにこの話しが出たときには、幾ばくかの動揺もしたのだけれど、時間をかけて状況を受け入れられるよう気持ちを整理してきてもいた。

それは、大きな布を丁寧に丁寧に折り畳んでいく作業のようだった。
この儀式のような作業は終わらなければよいのに、などと思う事もあったが、どうやらもうすぐで終了のようだ。

「それで、オレたちの部屋の隣りがお母さんの部屋。それから、ここが台所で、、、、あれ?トイレどこだっけ?」

次男が考え込む。
けれど程なく思い出し、トイレの場所とお風呂場を書き足した。
そして、当然ではあるけれど、僕の部屋は出てこなかった。

「楽しみかい?」

僕が尋ねる。

「うん」

次男は満面の笑みだ。

「そうか、それはよかった」

僕は笑いながら、ビール缶をあけ、換気扇を回しタバコに火をつけた。
多分、今の僕にできる精一杯のことがこの程度だったからだ。

長男は薄々僕と奥さんの事には気がついているようだった。
言葉にしないのは、僕と奥さんは決して仲が悪いわけではないのと、いや、どちらかというと、とても仲が良いのを仄かな希望として捉え、考えないようにしているからかもしれない。

「父ちゃんは、この家に残るんでしょ?」

次男が尋ねた。

「うん」

「じゃあ、休みの日には友達呼んで、この家で遊ぶよ。いいでしょ?」

「もちろん」

僕が答える。

そして少し考え込む。
多分、子どもたちの物は何もかもこの家からはなくなるだろうし、仮に遊びに来たとしても楽しんでもらえないかもな、などと。

突然次男は立ち上がると、一生懸命書いた間取り図を消し、連絡ボードを抱え込んで隣のリビングに移動した。

そして背中を向けて座り込むと、連絡ボードに何やら書き始めた。

僕は二本目の缶ビールを明け、奥さんが作っておいてくれた夕御飯を食べ始めた。

まあ、なるようになるさ。

そう考えて食事をとった。

「できた」

次男は連絡ボードを隠し持ちながら戻ってくると、書き込み面を下にしてテーブルに置いた。

「トイレ行ってくる。それ、見てもいいよ。下手くそだけど」

次男はそう言ってダイニングを後にした。

僕はそーと、裏返しになっている連絡ボードをひっくり返した。
そこには、宣言通り下手くそな絵が書かれていた。
それはどうやら人間で、四人いて、皆手をつなぎこちらを向いて笑っていた。

暫くして戻ってきた次男に「これは何だろう?」と尋ねた。

「左端は父ちゃんだよ。隣がオレで、その隣がお兄ちゃん。それで右端が母ちゃんだよ」

そういって笑った。

僕は改めて連絡ボードに描かれた絵を見た。
そして、暫く言葉を忘れたように絵を眺め続けた。

一つ違和感に気がつく。
四人は笑っているけれど、僕の手を取る次男の口元だけ笑っていなかった。
まるで、僕の手をつなぎ止める事に必死で、家族であることを維持しているようにも見えた。


「おれ、家族が好きなんだよ」

次男が照れたように言う。
僕は、次男の頭に手を置いた。
そして撫でながら、もしかしたら次男も本当の事を知っているのかも、と考えた。

次男は自分にできる限りの方法で、僕ら家族を繋ぎとめようとしているのかもしれない。

「この絵、暫く消さないでよ」

僕は次男にお願いをした。
気まぐれな次男は直ぐに消してしまうかもしれない。

それでも良いか。

こんな素敵な絵は、人生の中で、なかなか見ることはできない。

「さて、宿題やったかな?まだならいつものように父ちゃんと一緒にやろうか?終わるまでつきあうよ」

そう言うと、次男はニコニコしながらランドセルを持ってきた。

「安心して。手付かずだよ」


そう言いながら、次男はランドセルをひっくり返して、中身を床にばらまきながら笑った。















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No title

朝から涙が流れました・・・




できるものなら、家族全員で過ごして欲しい・・・


Re: No title


とうえい 様

コメントありがとうございます。


次男からの思いも寄らぬメッセージ。
こみ上げるものがありました。

僕は、何の変哲もないごく普通の日々を家族と過ごすことにこの上ない幸せを感じるのですが、憧れとなると、なかなかどうして、易々とは手に入らないものにすり替わります。

けれど、こんな状況ではありますが、僕は幸せ者だなと思ったりもします。

幼稚園や学校の父の日母の日イベントでも無いのに、ましてや頼んだわけでも無いのに、思いのあるメッセージを貰えるなんてそうそう無いと思います。

裏を返すと、ダメ父ちゃんとなるのかもしれませんが。

離婚をした後も、奥さんは子供達との車中泊旅行には、割と率先して一緒にいってくれました。
楽しかったです。

けれど、どうやら塩時のようなので、手作りの車中泊キットは処分しようとおもいます。

子供も大きくなりましたしね。

ちょっとヴォクシーでは窮屈ですし(笑)

No title

こんにちは、ついに私達読者が
恐れた日が来てしまいましたね

しかし、こうして記事にされるという事は、
もう実際には別居されているのでは?
とも感じております

現在進行形だと、なかなか書けない話ですし、
kakeruさんの記事は、「百億の昼」あたりが
総集編のようにも思えます

「肖像」の絵、確かに次男君が必死で
パパと他の家族をつなぎ止めているようです
涙でにじんでしまうので、チラっと見るのが
精いっぱいなのですけど

Re: No title

aonekopapa 様

コメントありがとうございます。

現状のステータスは伏せ置きます(笑)

「百億の昼と、、、」の記事は、おっしゃる通り総集編です。

離婚話しがでて、そのインパクトですっかりブログ更新が滞っていた頃から、再開するに至り二つの目的で書いた記事です。

ひとつは、僕ら家族は果たしてどの様に暮らしてきたのか?
一つ一つを噛み締めるに、結論としては仲良く色々な所に出掛け、楽しく過ごしていたのだなと。
そこには後悔は微塵も存在しないんだと再確認するために。

もう一つは、全く更新ができていなかった間も、僕ら家族は遊びに仲良くでかけていたんだと、記事にできなかったエピソードを写真で掲載して、一端時系列の穴埋めを行い、再開の準備を行う為に。

一端整えた時系列ですが、再開するにあたっては、掲載する記事の時系列はバラバラにしています。

時系列に捕らわれなければ、少なくともブログの中ではいつまでも仲良し家族でいられますしね(笑)

さて、次の冒険は何だろ?
「さあみんな、いつものように父ちゃんとでかけるよ!」

いらっしゃいませ
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kakeru666

Author:kakeru666
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子どもたちとのお出かけ記録。

これからの方々の参考になれば幸いです。

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