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勝敗の行方は、その拳の中にある





「落ち着け!」

僕は体育館に響き渡るような大声を出す。

秋口、体育連盟主催の公式戦の中で、中学一年二年に限定したバドミントン新人戦が行われる。

都大会を本戦とするブロック予選。
僕は長男の応援に来ていた。

一年生で都大会の本戦に出れる見込みはないが、自分の実力を知る上では重要な大会だ。

来年の夏の大会をゴールとした場合、その時の三年生との実力差を見極めておかないとならないからだ。

「なにやってんだよ!」

僕は再び大声を出す。

二回戦。
恐らくは二年生との試合。
その一セット目。

長男はのっけからミスを連発した。
シャトルのコントロールが上手く出来ないのか、ネットに引っ掛ける、アウトを繰り返すで自滅の道を進んでいた。

試合の中で微調整をしているのは見てとれたが、どうにも修正しきれないようだった。

そして、相手にリードを許したまま一セット目を失った。



コートチェンジの際、監督なりコーチなり先輩なりにアドバイスを貰う時間があるのだが、長男の試合では監督席には誰も座っていなかった。

恐らくはコート際に座り込んで大声で怒鳴っている僕に遠慮してのことのようだった(笑)

なので、アドバイスを受ける先がなく長男は僕のそばまでやったきた。

「いいか、勝負を急ぐな。技術じゃ勝てない。だから、ミスをするな。ネットに引っかけるな。相手のコートにシャトルを返せ。あと、アウトもするな。どうしたらいいか教えてやるよ。無理をしないことだ。あと、声を出せ。いいな」

僕は手短にアドバイスをして、長男をコートに返した。
部外者がアドバイスしていいのかわからなかったからだ(笑)





二セット目が始まった。

想定通り、一セット目の流れを変えきれず、長男はミスを繰り返す。

そして、瞬く間に五ポイントを失った。

「負けたな」

近くで見ていた同じ中学の先輩が、そう言い残して体育館を出て行った。

僕は笑う。

多分、負けないよ。

僕は心の中でそう言った。

長男はアドバイスに従ってポイントを取りにいくのを止めていた。
よほどの素人でなければ、ミスの原因を修正するにはさして時間がかからないはずだ。

六ポイント目。

長男はしぶとくシャトルを返し、相手のミスを誘い出した。

深いライン際まで追い込んで甘い玉を誘い出し、スマッシュを打ち込む。
その時も無理なコースと高さは選ばず、開いたスペースに丁寧に叩き込んだ。

「ょっシャー!」

長男がコートで拳を握り締め、大きな声で吠えた。

「ナイスショッ!」

僕も大声で誉める。

そこから反撃が始まった。

長男はポイントのたびに背中を丸め、両手で握り拳をつくりながらコートに向かって大声で吠え続けた。

人が変わったように的確にシャトルを返し、ポイントをとる度に大声で吠える長男に相手は威圧されていく。

長男も大声で吠える事でアドレナリンがでまくったのか、集中力があがっているのが見て取れた。

試合は、そのゲームを支配した方が勝つ。
余程の実力差がない限りは、上手下手など公式戦ではさほど関係がない。

二セット目をひっくり返した長男は、その勢いのまま、ゲームそのものをひっくり返して勝利した。




三回戦。

長男は完膚無きまでに叩きのめされて、呆気なく負けた。

トーナメント表を見た時に、既に想像はついていた(笑)

三回戦は第一シードの選手とあたる。
いわゆる優勝候補だ。

まあ、ブロックの実力が解ったのと、試合で何が大事なのかが理解できたのなら、かなり収穫ありだ。

僕も良いものが見れたなと満足した。

何しろ普段なにしゃべってるのか全く聞こえない長男が、大声で吠えていたのだから。

自宅に帰って、パートだった奥さんに拳を握りしめ大声で吠える長男の勇姿を報告したら、
「全く想像出来ない」
と眉間にシワを寄せていた。

まあ、そうだよね(笑)

普段が普段だから。









手前選手が長男。

近くにある椅子が監督席。

カメラ位置が僕の居るところ(笑)
床に座ってます。

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No title

こんばんは、私も勝負の厳しさと勝ち方を教えるのは親の役目だと思います。
楽な時に人の技量の差は出ません。
追い込まれた時にその人の真骨頂が現れます。
それがあるのかないのかで将来大人になった時に違いが出ます。
仕事もそうだし、私のやっているマラソンや株も苦しい時に逃げ出さずに乗り切る人間だけが成し遂げられます。
子供たちはそういうことを教えてくれた親のありがたみに将来気付いてくれることでしょう。

私のブログにコメントくれた件について記事を消してしまったのでこちらで返答させて下さい。
業務連絡を消したら消えてしまい失礼しました。
天才・・・は半分当たりです。
普段は夜中までネット対戦等をして占領していますが、今は期末試験前で遊ばせないために家のパソコンを立ち上げていないのです。
パソコンのパスワードは一人しか知りません。
私も教えられたらしいが使うことが無いので解りません。

No title

こんにちは~♪

先日、長男エウ助の空手試合がありまして
空手経験の無い自分は、具体的な指導は
できないけど、大声でアドレナリンを思い出し
「とにかく大きな声を出して威圧してみろ!」
とアドバイスしてみましたら、初めて勝ちました

格闘技に眼鏡は不向きなので、引退試合
だったのですが、最後に良い経験できました

kakeruさん、どうもありがとう!

※エウ助は水泳に転向しました
度付きゴーグルが活躍します♪

Re: No title

なお 様

コメントありがとうございます。

勝負事。

僕はいつも緊張の連続で、常に吐きそうでした。

コーチに殴られるから(笑)

ですが、やがて血となり肉となり僕を形成してくれました。

驕りがあると負けます。

なので、僕は相手のレベルがどうであれ、常に全力で潰しにいきました(笑)

本当は勝負が怖いからですが。

けれど、この恐怖心は諦めていないからであり、戦いの舞台に乗った人の中で、勝ち負けを真剣に意識した人だけが得られる宝物だと思います。

天才高校生のご子息も、この恐怖心は自分の物にしていると想像します。

でなければ、あの名勝負はなかったでしょう。
テレビの前の視聴者は全員手に汗握ってましたもん。

いや、むしろ勝負の恐怖心をかみしめていたのはぜったい王者
の「あめみやたいよう」の方かもしれませんね。

勝負の時に自分に恐怖心を与えてくれる対戦相手はとっても尊敬したりします。
「あめみやたいよう」も、ご子息には一目置いていることでしょう。

余談ですが、長男を応援したとき、僕は一切「頑張れ」とは言いませんでした。

「頑張れ」の応援は、バックネット裏で観戦しているのと同じだと思っています。

叱咤し、アドバイスし、賞賛する、は、応援される側にしてみると同じフィールドにたつ仲間のような安心感を得られると考えています。

だから僕は怒鳴りまくってました(笑)

よくいますよね。
メッチャ怒ってる監督とかコーチとか(笑)

勝たせようと真剣なのが、伝わりますもん。


勝負事。

子どもたちには、たくさん場数を踏ませたいと思います。

Re: No title

aonekopapa 様

コメントありがとうございます。

馬鹿みたいかもしれませんが、「声を出す」のは勝負時には有効です(笑)


闘争本能にに火を着けます。

闘争本能が灯ると不思議なくらい集中力が高まりますし。

よくある話ですが、試合中は周りのギャラリーの声は全く聞こえません。
物凄い集中しているのだと思います。

それと、闘争本能が頂点の時は身体の故障箇所があっても痛みすら感じなかったり。

だから、アスリートの人達はある日突然壊れちゃったりするんでしょうね(笑)

本人は無理をしているつもりがなかったりするのに。

面白ネタですが、テニス部にいた選手で、それは、女性だったのですが、上手くプレイができないとき、ラケットで自分のスネをバシバシ叩いている人がいました。
癖のようなのですが、
「痛くないのか?」
よく思いましたが、本人闘争心剥き出しの状態なので、何も感じていないみたいでした。

僕も試合中サービスでトスをしくじった時など、ホームを崩して、ラケットで自分のスネを激しく叩いてしまうことがよく有りました。
でも、試合中は痛さを感じてる暇が無いみたいで(笑)

トーナメントが終わると、左足のスネがあざだらけなんて事よくありました。

お子さん、勝利の美酒を味わったのですね。
苦汁と美酒は中毒になりますよ(笑)


是非、たくさんチャレンジさせてあげて下さい。

切磋琢磨は人を成長させますし。

隴西(ろうさい)の李徴(りちょう)も同じ事言ってますし。(笑)
*中島敦 作、「山月記」より

いらっしゃいませ
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kakeru666

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子どもたちとのお出かけ記録。

これからの方々の参考になれば幸いです。

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