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とんび
※とんびがくるり・・・・






※※※


その部屋は想像していたより綺麗に整っていた。
「みっちゃん」は寝たきりで、少し意識も覚束ないような事を聞いていたので、思った程ひどくは無いのだなと少しだけ安心した。


「なんだか、お前にあいたいようだよ」

そんな話を僕の両親から聞いたのはだいぶ前の事だった。
寝たきりのみっちゃんが、妙に僕の事を話題にするので、僕の写真と連絡先を置いてきたのだと言っていた。

けれど特に連絡の無いままで、最終的には両親に引っ張り出されて、みっちゃんの住む都心まで行く事になった。

みっちゃんは父親の妹だ。
もうかれこれ四十年以上は顔を合わせていない。
歳は幾つだか知らないが、たしかそれほどの歳ではなかったと思う。

みっちゃんはパーキンソン病を患っていて、一人で立つことはもうできない。
けれど一人暮らしをしていると聞いて、その暮らしはどんな事になっているのかと不安に思っていた。





僕が四歳くらいの頃、六畳一間のアパートに家族で暮らしていた。
それほど複雑では無い事情であったが、日中は一人外で遊び、夜暗くなるとアパートに戻る日々だった。

みっちゃんは、同じアパートに住んでいて、仕事が休みの日など一緒に遊んでくれた。
時々連れて行ってくれるデパートだかパーラーだかで御馳走になるアイスが、とても美味しかった事を覚えている。

連れて行ってくれた潮干狩りでは、「ここ掘ってみなよ、ここ掘ってみなよ」としきりに言い、言葉に従って砂を掘り返すと、貝ではなくオモチャがでてきた事も思い出した。
あれは、みっちゃんが用意したものだったのだろうか?



「昔、一緒に遊びに行った事、もう、覚えてないでしょう?」

久しぶりにあったみっちゃんが言う。

「全部覚えているよ」

本当に覚えている。

みっちゃんに逢って、その懐かしい顔を見た瞬間、全ての記憶が蘇ってきた。
なんだか、頭の中で「パーッ」と言う音がしたみたいに感じた。

それからしばらく、みっちゃんと昔話をして、そして僕と両親とで部屋の掃除とか片付けとかして、丸一日を過ごした。

毎日、介護の方が訪問して面倒をみてくれているようなので、あまり片付ける箇所はなかったが、カーテンの付け替えや、壁掛け時計の電池交換やぞうきんがけなどをしたり。

帰りがけ、みっちゃんは車椅子に乗り、玄関口までお見送りをしてくれた。


また訪れる事があったなら、今度は子どもを連れてこようと思った。


長男と次男、どちらがあのころの僕に似ているか、みっちゃんに採点してもらうのだ。
どっちも似てるよと言って、懐かしんでくれたら嬉しいなぁ・・・。
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子どもたちとのお出かけ記録。

これからの方々の参考になれば幸いです。

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